飛べないカラスたち
「ぁあ?だったらレイヴンとジャックドーが二人で行って、何かあったらどうするんだよ」
若干語尾を無意識に強めてクロウはレイヴンに言い返す。
レイヴンならそれならばここは危険だから二人でどこかへ逃げろ、なんていうことを言うだろうが、クロウはそんなことを了承する気はないし、ルックだって納得はしないだろう。
「落ち着けクロウ。危険性はあるが、確実じゃない。それに俺たちも『カラス』の一員だ。そう易々とは殺られない」
「でも、武器が使えなくなる可能性だってあるんだろ。俺は絶対二人だけで行くなんて認めねぇぞ」
「僕も、そんなの嫌だ」
クロウとルックの言葉に、ジャックドーとレイヴンは少し困ったように互いを見合わせる。
互いに何も言えずにただ沈黙が落ちる。
どちらも退けない。どちらも危険に陥るかもしれないのだから。
冷蔵庫のモーター音が、普段は気にならないのに今日だけは厭に響いて聞こえる気がした。
「……第三地区の先代の『カラス』は、全員死亡してる」
諦めたかのように、ジャックドーが口を開いて発したその言葉に、三人は衝撃を受け、ジャックドーを見た。
「え…」
「そんな…」
「勿論、殺されたとは言えない。俺たちは医療機関で死ぬ人間の削除音は聞き取れないからな。ただ、先代の三人はこの数ヶ月のうちに亡くなっていた。病院でな」
確かに歳をとってはいたがそれでも、3・4年前に逢った時は健康状態に問題はなさそうだったし、むしろ普通の人間よりも身体を動かす分、若々しかった。
そんな彼らの、死。
音もなく訪れた、この世からの消滅。