飛べないカラスたち
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日本を含む、世界は温暖化によって北極・南極の氷が溶け、かつてあったはずの土地はいくつか沈んだ。


これに危機感を抱いた世界はこれ以上の浸水と、土地の水没を防ぐために高い高い防波堤を作り、上昇を続ける気温を防ぐため、国一つを丸呑みするガラスに似た箱を作り、国を、海を包囲した。


この国を包囲する物質は新しく作り出された最新の化学物質で、熱にも水にも強く飛行機や船などが近付けば最低限の道を開く、自動ドアのような機能が付いている。


なので、輸入や輸出は従来通り自由に出来、国の中の気温もガラスの中で設定された温度を保ち、夏場は50度近くを上回っていた気温は年中一定になり、住みやすくなった。


ただ、日本にあった四季はなくなり、果物や野菜は殆どがハウス栽培となった。


動物たちは数多くが絶滅し、鳥も全てが絶滅した。


しかし、鳥というものを図鑑でしか知らない人間たちが増えると、鳥の居ない違和感を感じないので特に気にしなくなる。


当たり前。


鳥が居ないのも、野菜がハウス栽培なのも。気温が年中一定なのも、空にガラスが貼られているのも。






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