飛べないカラスたち
「なっ……」
突然の乱暴な侵入者に叫び声を上げさせる間もなく、ジャックドーは右手で短刀を握り締め、左の手のひらを短刀の柄の先端に当てると、男の顎を一蹴し、天井を向いたその胸に短刀を突き刺した。
容赦も何もない、迷いさえもない、一撃。
バキィ。
硬いプラスチックの入れ物が割れるような音が手の中に響いた。
何の助けも、なんの最後の言葉も残すことなく、ただ驚愕の表情で命の終わりを迎える男。
削除音が、響く。
そして、ジャックドーはこの男が死んだことを確認すると、室内に踏み込んで押入れの中を捜索する。
何かの漫画や、玩具などのガラクタの山を掻き分け、程なくして、大金の入ったリュックサックが現れた。
独特の重さを感じさせるその荷物は、集めた資金だろう。
きっとこの資金は『カラス』の捜索費に使われたことはまずなく、この男の部屋に置かれている幾つものフィギュアの資金と消えたのだろう。
束ねられていない紙幣と、紙幣を束ねていたはずのちぎれた紙の紐がいくつか無造作にリュックサックの中で混ざっていた。
溜息をついて、押入れのふすまを閉める。