飛べないカラスたち
人間は自然交配型と科学交配型の二つに分けられた。
自然交配型は従来と同じく、なんの手も加えずに生まれてきた人間。
そして、科学交配型とは、人間が科学の力でDNAを細工し、作り出した人間のことを指す。
科学交配型の人間を作るには受精卵の中に、どんな人間になってほしいかというリストから、両親が自分好みの人間になるようにあれこれとDNAを選び、それを受精卵へと挿入し、作られた人間のことである。
父親の精子は自然に任せる場合と、精子の中から父親のいいDNAを選び取り、受精させるという方法を用いることも出来るようになった。
例えば髪は黒、目は二重で赤と青のオッドアイ。身長は高めで細身の筋肉質。文系。父親から芸術の才能も遺伝させる。
親がそう選択すれば、子供はその遺伝子を抱いて生まれ、選択されたとおりの人間になる。
心臓は生まれてきて暫くすると身体と共に成長する半永久的に動く電池を装備している心臓に替えるお陰で、死ぬ人間も減り、脳の内容量は従来よりも1.5倍に増え、仕事は従来より3分の2ほどの人数で事足りるようになった。
切り捨てられた3分の1は、違う新たな道を選ぶか、本当に必要がなくなるかの二つに分かれた。
必要がなくなった人間を、長く生かしておくほどの土地は無い。例え一人の人間が発する熱量が少なくても、それが国の3分の1の人間となると、莫大な熱となり、国を覆う箱が設定する温度に下げるまでにかなりのエネルギーを消費する。
その無駄をなくすため、殺人鬼や不必要になった人間、利用価値のなくなった人間を削除するために生きる組織が、どの国にもいくつか秘密裏に存在している。