飛べないカラスたち
死ぬことが無くなった人間とはいえ、心臓(コア)を壊せば死ぬ。
一般家庭に置かれている包丁や拳銃等では壊せない、どんな衝撃にも強い、まるでプラスチックの硬い容器に守られている心臓(コア)を唯一壊すことができる特殊な道具を持つことを許されたのが、その組織である。
この日本にも、その組織が、普通の人間に混じって確かに息衝いていた。
誰も彼らの素性を知らない。
ただ、全国民の恐怖の対象であり、その恐れと憎しみから人々は彼らのことを『カラス』と呼んだ。
唯一人を殺すことを許された人間たち。
カラスが向かうところに死体があるという古くからの言われを倣ってのことだったが、皮肉にも彼らには全員、本当にカラスの名が付けられていた。
リーダーはレイヴン、その下にクロウ、その下にルックとジャックドー。
世界にはその名を持つ、人間の削除を仕事としている人間が、幾つも存在していた。
そして、その全国民の恐怖の対象である組織の中の、日本の第三地区担当であるルックとクロウは二人で住む仕事の本拠地であり、寝床のマンションへと向かっていた。
真夜中三時、第三地区の高速道路を伝って。
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