飛べないカラスたち
うまいように言いくるめられているような感覚はあったが、ルックはその話の続きをせがむ。
言葉にはしないものの、医師はその視線に気付いたのだろう、詳しく話して聞かせた。
「彼の両親は有名企業の上層部の人間でね、下層部の人間に恨まれて切り殺されたんだ。勿論死んではいないが、死よりも辛い痛みの中で身悶えていた。だから同意の下、殺した。彼は言っていたよ、痛みを感じるべき人間が痛みを感じないのなら自らが痛みを与えてやる、とね。彼はこの間その殺人犯を手に掛けたよ」
「………」
「みんな何かしらのトラウマを抱えた子たちが集う組織だ。それに何も毎日人を殺すわけでもない。厭なら他のメンバーが殺してきてくれる。わかるか、殺人と言うリスクの高い仕事をするからこそ、その絆は強くなるんだ。誰も君を見捨てたりしなくなる。君が必要だからね。そして誰も殺されない。彼ら以上に優位な人間なんて殆ど居ないんだ、わかるだろう?君を含む彼らは人を殺す特殊な武器を持っているのだから」
今思えば、大人たちの汚い嘘だったようにも思える。
結局今ではほぼ毎日人間を殺している。殺すに等しい人間が、溢れるほどリストにいるのだ。
それでも確かに、出会った三人は絶対に裏切らないし、誰よりも強かった。
そしてルックは『ルック』と呼ばれるようになり、ナイフを肌身離さぬようになった。
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