飛べないカラスたち
ドクン、ドクンと心臓は早鐘を撞くように、忙しなく脈打ち、その所為か妙に身体中がじっとりと汗ばみ、呼吸が浅く、荒い。
そんなクロウの様子を見ても、心配する素振りさえなく、女は微笑んだままだった。
「久しぶりね。生きてたの……ずいぶん大きくなったわね」
女は静かに呟く。
「今は、『カラス』になったのね。武器によって位が違うらしいじゃない。一番上はレイヴン、伸縮自在の槍。二番目はクロウ、銀の銃。三番目の二人はジャックドーとルック、短刀二つとナイフなのよね」
ふふふ、と歌うように笑うその声に、ゾッと背筋に寒気が走る。
目だけが笑っていないのだ。
この女はいつも、怒る前には声だけは笑って目だけは恐ろしいほどに冷たくなるのである。
一歩、女が近付く。
一歩、クロウが震える足取りで、下がる。
「どうして逃げるの?」
突然、全ての空気を切り裂き、消滅させるような鋭い声が響いた。もう口元でさえ、笑ってはいない。