飛べないカラスたち
まるで真夏の空から、ツララが降り注ぎ、見境なく頭や腕や背中にその鋭い先端をのめり込ませ、精神を抉り取ろうとするような声。
クロウは目も合わせられずに、顔を逸らしたまま、動けずにいた。
一瞬の隙を突いて間合いを詰めた女は、その白い腕を何の迷いもなくクロウの首へと伸ばし、爪を立てて掴んだ。
「……っぐ…!」
掴まれた途端、身体中の糸が断ち切られた操り人形のように、クロウは両手をだらんと下げ、成す術なく女の成すがままとなっている。
身長差はクロウの方が頭一つ分ほど高いにも拘らず、圧倒的に女が優勢だった。
「私がどれほどあなたを探していたかわかる?」
ギリギリと、クロウの首筋に立てられていた爪が離され、直後に乾いた打音が響く。
暗い墓地にパァンと響いたその音に少し遅れて、クロウが倒れこむ音が重たく聞こえた。
湿気を含んだ土の匂いが吸い込む酸素の大半に染み込まれているが、それを堪能する暇もない。
むしろ呼吸さえも出来ていない。
肺も心臓も胃も痙攣を起こしたかのように正常に働かない。
倒れたクロウの腹や腕、脚を、女はその華奢な足からは想像できないほどの力を込めて蹴り飛ばした。
何度も、何度も。