飛べないカラスたち



「あなたは……ジャックドーね」



母親の声で気付いたその存在は音もなくやってきた、先ほどの風のように、いつの間にかそこにいて、この空気をかき消していた。



「ジャックドー……」



殆ど会うことのなかった仲間の存在に少しだけ驚いたように声を上げる。


仕事が終われば今日はクロウとルックが住んでいるマンションに集合と言うことになっていたはずで、今クロウがいる場所はマンション付近でもなく、ジャックドーの担当場所とも決して近いものでもなかった。


だがしかし、ジャックドーなら仕事上、行き着いたのかもしれない。この女と、クロウの関係を。


そして、最後の一人に時間が掛かっているのを不審に思って仕事が終わってからクロウの元へとバイクシューズを飛ばして来てくれたのだろう。


寸でのところでクロウの拳銃から放たれた銃弾を短刀二つで何とか防いだジャックドーは虚を突かれたクロウの母親の手を蹴り上げ、その拳銃を取り返すとクロウに投げ渡した。



「立てるか?クロウ」



「…あ、…あぁ」



思わず先ほどの吐き気もどこかへ飛んでいくほどの衝撃的な現実に、クロウは口元を拭うと少しふら付きながらも立ち上がった。


母親は蹴られた手を庇いながら二・三歩後ずさりながら、小さく笑い声を上げている。




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