飛べないカラスたち



別々に過ごすことで、互いに余裕が出来て、次に出会った時は今までのことなど何もなかったかのように、今までの母親が嘘だったかのように、優しく笑いかけてくれるのではないかと思っていた。


実際は四年ほど離れて、また再会しても、何一つ変わりはしなかったが。


ただ変化としては、母親の体が小さく見えたことくらいだろうか。


香水も、動作も、何も変わらない。



「言いたいことがあるなら言いなさいよ!」



パン、と乾いた打音が鳴る。


力がうまく入らない足が、身体を支えられずにふら付いて思わず膝を付きそうになるのを何とか堪えた。


自分が、決別を下さねば。


例え、一度だけでいい、愛されていると感じたいと思っていたとしても。願っていたとしても。




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