僕が君に
教室にはさっきと変わらず、真紘くんは画用紙をじっと見つめていた
「真紘くん…」
泣いているに違いない…
真紘くんは顔をあげ、予想だにしない表情をしてみせた
その表情は涙一つも見せない笑顔だった
俺の言葉は正しかったんだろうか
『男の子は簡単に泣いちゃダメだ』
「恵せんせぇ、僕パパいないんだよぉ」
正しかったのか…?
笑顔でこんなことを言わせて正しかったと胸をはって言えるだろうか
言えるわけない…
「…真紘くん…ごめんね…」
謝るしかできなかった
気付いたら俺が沢山の涙を浮かべている
「恵せんせ…?…泣かないで」
そんな言葉を言われた瞬間小さな手が俺の頭を撫でていた
まわりからみると多分滑稽な姿
ひどいことを言われた少年が大人の男を慰めている
真紘くんは本当に強い男の子なんだ
俺は強くなれなかった大人…
神様どうか真紘くんだけはこれ以上悲しみを与えないで下さい
どうか…どうか……