誰も知らない花であるように

メロス

振り返らないよ 怖くない
追いかけるのは まだ今も


抜けきらない毒が
この目を狂わせたまま
優しく塞いで
この胸を温める

濡らした指先で
触れたのは幼い闇
底に溜まる声
幻を呼んでいる


繋ぎたいのはチグハグな景色と時間


振り返ればまだ そこにある
アナタの笑顔 その背中
片付けられずに 散らかって
重すぎて歩けなかった


見慣れない隙間
気の触れた風が踊る
此処にいられない
もうすぐ行かないと


泣いても良いなら此処から走るから


振り切った影が いつかきっと
冷めたこの胸に 突き刺さる
振り返らないよ 怖くない
追いかけるのは 今もまだ

｢強く生きて｣
二度と逢わないための約束を抱えて
走るから


振り返らないよ 怖くない
追いかけるのは まだ今も
振り返らなかった アナタの背中

振り返らなくても良いよ
もう見えない