塾内恋愛
「…ッハアッハアッ」


一生懸命走ったあたしたちは


丁寧に囲んだアイラインもヨレ、


由美の努力がにじみ出ている


キレイな巻き髪はいつものように


直線を描いて、胸下まで


行儀良く、伸びている。


「あ~あ、由美の巻き髪、


もうストレートじゃん…。


あたしも化粧は落ちるわ


汗でベタベタだわ…」


あたしは愚痴をこぼしながら


塾の薄っぺらい扉を開けた。


すると、風と同時に、普段の


塾にはないようなふわっと


いい香りがあたしたちを


包み込んだ。

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