カラス
「それなんだけどねぇ……明日、帰らないといけないんだ」
 明日? もう時間がないじゃないか。
「じゃあ、早く想いを伝えにいかないと」
「いいの。会えただけで嬉しかったから」
 彼女はそう言い、笑みを見せる。
「でも……」
 言葉が詰まった。結局は彼女が決めることだ。僕が口出ししても意味はない。逆に大きなお節介である。

「優しいんだね」

 その言葉の後、彼女の唇が僕の頬に触れた。
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