カラス
「!?」
「お礼」
 小悪魔的な笑みを浮かべて彼女が言った。
 天真爛漫とは良く言えたものだ。
「私、もう帰らないと」
 そう言い、彼女は手を出す。
「何?」
「携帯よ、携帯。メールアドレス、せっかくだから交換しましょ?」
「え……あ、うん……」
 携帯を取り出し、アドレスを交換した。
「じゃ、私帰るね」
 携帯を閉じて、彼女は立ち上がった。
「送ろうか?」
「いいよ、大丈夫だから。じゃあね」
 彼女は小さく手を振って歩いていった。

――その晩、彼女からメールが来ることはなかった。
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