もっと好きになる
「秋山??」
低く落ち着いた声で呼ばれて、反射的にバッと身体を起き上がらせた。
後ろに振り返ると…
「瀬戸君…」
そこにいたのは、隣の席の瀬戸拓也だった。
あまり目立たない存在だけど、意外に女子には評判が良い男の子。
あたしは愛想笑いを交わすと、瀬戸君は不思議そうな目をしている。
「お、おはよ!瀬戸君!」
「秋山が何でこんな早い時間に?」
いつも俊希と一緒に遅刻しているからか、この状況が理解出来ない瀬戸君。
俊希と登校出来なかった事を話すと、鼻で笑われた。
「毎日遅刻する素は、俊希にあったのか」
「いや、そうじゃないけど…いつもバタバタしてて忙しいんだよね」
俊希に会える、もうすぐ会えるって考えるとドキドキして念入りに化粧したり制服整えたりしちゃうんだ。
これが恋する乙女?なのかな?
瀬戸君は鞄を机の上に置いて、黒板の方へと歩き出す。
あたしはただ椅子に座りながら瀬戸君の歩く姿を見ていた。
「瀬戸君は、何でこんな時間に?」