もっと好きになる
だけど、『先輩と会わないで』なんて言葉言えるわけがない。
言える立場じゃないから…そう思っていたけど、本当はただ勇気がないだけなのかも知れない。
あたしは【そっか】とだけ送って携帯をポケットに入れた。
1時間目の授業前。
移動教室で皆一斉にぞろぞろと教室から出て行く。
あたしは最後まで残って、人がいなくなるのを待った。
理由があるわけでもなく、ただ一人になりたかっただけ。
席に座っていると、隣の瀬戸君があたしの机の前で立ち止まった。
「え?」
「行かないの?次、移動教室だぞ」
ボーッとしてるあたしに教えようとしてくれたのか、瀬戸君の優しさには安心感が湧く。
「ごめんっ、一人になりたかったから人がいなくなるの待ってただけで…」
思わず俯くと瀬戸君は、心配そうにその場で座り込んだ。
机に肘をついてあたしをじっと見る。
気持ちが沈んでる理由を伺うかのように…
「何かあっただろ?」
いつもより1トーン下げた声で問いかけられた。
首を横に振ると、強い目で凝視された。