もっと好きになる




だけど、『先輩と会わないで』なんて言葉言えるわけがない。



言える立場じゃないから…そう思っていたけど、本当はただ勇気がないだけなのかも知れない。



あたしは【そっか】とだけ送って携帯をポケットに入れた。



1時間目の授業前。



移動教室で皆一斉にぞろぞろと教室から出て行く。



あたしは最後まで残って、人がいなくなるのを待った。



理由があるわけでもなく、ただ一人になりたかっただけ。



席に座っていると、隣の瀬戸君があたしの机の前で立ち止まった。



「え?」



「行かないの?次、移動教室だぞ」



ボーッとしてるあたしに教えようとしてくれたのか、瀬戸君の優しさには安心感が湧く。



「ごめんっ、一人になりたかったから人がいなくなるの待ってただけで…」



思わず俯くと瀬戸君は、心配そうにその場で座り込んだ。



机に肘をついてあたしをじっと見る。



気持ちが沈んでる理由を伺うかのように…



「何かあっただろ?」



いつもより1トーン下げた声で問いかけられた。



首を横に振ると、強い目で凝視された。



< 14 / 30 >

この作品をシェア

pagetop