もっと好きになる
だけど歩美は、美紀先輩を嫌ってるみたい。
「歩美もね、美紀先輩に男とられたんだよ」
悔しそうに持っていたホウキをギュッと握り締める歩美。
「だから歩美は、先輩を嫌ってるの?」
「そう。大正解!」
歩美もあたしと同じ気持ちになった事があったんだ…
少し胸がホッとする。
「俊希は美紀先輩とはニコニコして話すのに、あたしにはそんな顔見せなくて…」
たった中学3年生の恋愛事情なのに、何だか奥が深いように感じた。
子供でもちゃんとした恋するんだからってね。
それともただのお飯事の延長戦?
最後に歩美は、『恋って難しいね』と笑いながら言っていた。
その日の夜。
あたしは部屋でゴロゴロしていると、突然携帯が鳴り響いた。
着信は知らない電話番号からかかっている。
出るか出ないか迷ったが、最終的に電話に出る事にした。
「…もしもし?」
恐る恐る声を出すと、聞き慣れた声が受話器から聞こえてきた。