もっと好きになる
スゥッと深呼吸すると、ゴクンと喉を鳴らして小さな声で呟いた。
「あたしの友達がね、今好きな人いててね」
『うん』
「だけどその子とは別に、先輩が好きな人を狙ってて複雑な気持ちでどうしたらいいか分からないらしんだぁ…」
ちょっとした嘘をついて、全部思ってる事を話した。
瀬戸君は、黙ってウンウンと真剣に聞いてくれて…ほんの少しだけど、気が楽になった。
「その友達は、どうしたらいいと思う?」
最後まで話すと、質問を投げかけた。
―あたしは、どうしたらいいと思う?―
うーんと考えながら明るい声で『好きに理由はないんだから、想ってるのは自由と思うよ?だから、想いを伝えるのも自由って事…って友達に伝えといて?』
きっと瀬戸君は、あたしの出来事だと勘付いたんだと思う。
少し笑い混じりで、だけど優しい口調で元気を与えてくれた。
「うん…伝えとくね。本当ありがとう」
『お安い御用だからさ。いつでも相談して来いよ?じゃぁこれで……あ、俺の番号もし良かったら登録しておいて。じゃぁーな』
そう言って一方的に瀬戸君は電話を切った。
男友達っていいなって思った瞬間だった。
あたし、もし俊希との境界線があっても、好きで居続けるよ。
例え間違った道だったとしても…