もっと好きになる
―8月。
あたしは15歳の夏―…恋をする。
とはいえ、一方通行の恋なんだけど。
「梓~…」
トロンとした甘い声であたしの名前を呼ぶのは、幼なじみの俊希だ。
俊希が涙目で見つめてくるのは、お酒で酔っている時だけなんだ。
「また飲んだの?」
呆然としているあたしの肩に手を乗せてくる俊希は、小さい子供みたいだった。
―秋山梓―
あたしは今、恋をしている。
両思いなんてなった事がないから、別に見ているだけの恋でいいと思っていた。
……今までは。
「梓の手、冷てぇ~…」
いつの間にかがっしり手を掴まれていて、熱いくらいに温かい俊希の顔が手に触れていた。
完全に酔ってるし…
いつもとは違う俊希に、胸がドキッと鳴った。
こんな時でもドキドキするあたしは、ただの変態なのかな?