もっと好きになる
ふと部屋の時計を見ると、時間は5時を差している。
あたしは慌てて浴衣をクローゼットから引き出した。
「6時に待ち合わせなのに~!」
6時になれば俊希が家まで迎えに来てくれる。
っていうかお隣同士なんだから、当たり前なんだけどね。
電話で計画を立てていると、『俺、迎えに行くから』って言われた時沸騰したように顔が赤くなった。
セミロングの髪を1つにまとめてお団子に仕上げる。
お母さんにくれた"かんざし"を頭に差して、淡いピンクと赤色の花柄の浴衣を羽織った。
新しく買った浴衣は、汚さないように丁寧に扱う。
メイクも程よくしてから、小さな袋に財布と携帯を入れてリビングに下りて一服した。
「あら、可愛いじゃない♪」
背後からお母さんの黄色い声が飛んできて、あたしの浴衣をまじまじと見つめてくる。
キッチンから出てきたお姉ちゃんも既に、紫色の色違いの浴衣姿だった。
大人っぽくて可愛い~…
ロングの髪をコテで巻いていてすごくきれいだった。
「梓可愛い♪」
「お姉ちゃんの方が大人っぽくて可愛いよ!あ、お父さんいる?」
あたしに駆け寄ってきたお姉ちゃんに問いかける。