もっと好きになる
「お父さん?多分自分の部屋にいると思うよ」
「そっかぁ~…」
浴衣姿、見せたいのになぁ。
部屋に居るときは、仕事をしている時だから邪魔したくないしね。
携帯のディスプレイを見ると"5時50分"と表示されている。
後10分で俊希に会えるんだ~♪
楽しみで胸が躍っていると、お姉ちゃんは誰かと電話をし始めた。
「あ、裕也?うん、分かった♪」
そう言ってお姉ちゃんは電話を切った。
裕也というのは、お姉ちゃんの彼氏だ。
もうすぐ1年半が経つ付き合いで、すごく仲が良い憧れのカップル。
あたしはニヤニヤしながらお姉ちゃんを凝視していると、幸せそうに笑うお姉ちゃんの顔が一瞬にして元に戻った。
「何よ?!」
「お姉ちゃん、裕也さんにベタ惚れだねぇ~♪」
お姉ちゃんの肩を指でツンツン突付いていると、仕返しとばかりに反抗してきた。
「梓も俊希にベタ惚れのくせにぃ~♪」
「なっ…」
言い返したいけど言い返せなかった。