焦れ恋オフィス
夏基の唇がようやく離れた時には体中の力が抜けて、息もあがっていた。

「さっき、何で泣いてた?」

不意に聞かれたけれど、一瞬何の事かわからなかった…。

「俺が来た時、泣いてうなされてた…」

私を抱き締める手に力がこめられた…。

「泣いてた…?」

あ…。
夢。
小さい頃の思い出したくない夢。

「忘れた…。多分怖い夢でも見たんだと思う」

夏基が、私の言う事を信じたかどうかはわからないけれど、それ以上何も聞かなかった。

「それよりも」

私を抱き締める夏基の腕をゆっくりと解いて顔を上げて…視線を合わせる。

「どうして…私がここにいるってわかったの?」
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