焦れ恋オフィス
「わかってるよ。

俺と芽依の子だから『夏芽』」

ふふんと笑う夏基。


夏基の『夏』と
芽依の『芽』

「夏芽…。夏芽」

「高橋専務と話して聞いたよ。

兄妹だって」

「…」

「今まで何で言わなかったんだ…?」

「それは…」

「社長の娘って知られたくなかった?」

「あ…。それも少しあるけど…」

うまく言える自信がない…。

力なく見つめる私の額に夏基の額が寄せられると、

「…話しにくいなら、また今度でいい。ただ、芽依が他の誰のものでないってだけで…今は満足…」

思わず吐き出された夏基の想いが私の涙腺を更に緩める。

夏基の首に腕を回してしがみついたまま、何も言えなかった。

たとえ、夏基の本命が今は私じゃなくても、側にいてもいいって言われた気がした。
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