焦れ恋オフィス

診察を終えて、処方されたお薬を薬局で受け取ると、真里さんは当たり前のように車の助手席のドアを開けて

「巧もそろそろ会社から帰って来てるから、うちに来て話したら?」

「……」

どうしよう。

薬局の駐車場で立ち止まり悩んでしまう。

ずっと、赤ちゃんを産む事を反対していた兄さん。

愛妻の真里さんの説得で認めてくれたらしいけれど、反対しているというより悲しんでいる瞳を向けられるのが怖い。

「芽依ちゃん、いつかは巧にも会って話さなきゃいけないんだよ」

包みこむように優しく話す真里さん。

そう、いつかは話さなきゃいけないってわかってる。

兄さんの悲しみを受け止めて、折り合いをつけていく強さも持たなきゃいけないと、ちゃんとわかっているけれど。

わかってるけど。

けど、今は。

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