焦れ恋オフィス
溜息まじりに呟く俺の言葉に動じる事なく、にっこり笑って

「だって、堅人は私にべた惚れだもん。

…誰かさんと違ってさ」

そう言う瑶子は、人差し指で俺の胸元をかるくつついた。

「それは、お互い様だろ?」

「ふふっ。そうね。

お互い間違った選択をしなくて良かったって事よね」

綺麗な笑顔で話す瑶子は本当に幸せそうで、わかってはいたけれど俺と一緒にいなくて正解だったなと思う。

学生時代から四年ほど付き合っていたとはいえ、お互いに本当の恋人になりきれない関係だったな…。

何度体を重ねても埋める事のできない距離に悩みながら。
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