焦れ恋オフィス
エレベーターの扉が開き、乗り込もうとした時

「あの…」

腕を軽く掴まれて声がかけられた。
横を見ると、さっきまで同じ披露宴にいた…と思う…女の子がじっと俺を見ていた。

「何…?」

あぁ。会社で芽依との事が公になってからはなかったけど。

いわゆるお誘いだな。

芽依への苦しい想いを忘れさせてくれる女に出会えたら…。

と今までならのっていた誘いだけど、もうその気も起きない。

「良かったらこの後お茶でも…」

綺麗に髪を巻いて、シルバーのドレスを着たその女の子は誰が見ても美人で。
膝から下を出した足もまっすぐ伸びて魅力的だけど。

もう、無理なんだ。

「悪いけど。もうすぐ父親になるし…嫁さん一人を愛してるから。
こいつならいいぞ」

隣りで苦笑していた晴壱をその女の子の前に押し出した。
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