焦れ恋オフィス
夏基の声色に、いつもの軽やかさを感じられなくて、私は少し戸惑った。
何か、ばれたかと心の中で少し焦ったけれど、私の中にわずかに残っている余裕を引っ張り出してきて
「あらら。私の瞳もいつでもハートなのに。夏基が他の女の子ばかり見てて気付かないだけだよ」
「……」
夏基は、何も言わずにしばらく私を見つめた後、小さく溜息をつくと。
そっと顔を寄せて唇を重ねてきた。
啄むような、軽く触れるだけの優しいキス。
応えるでも拒むでもなく静かに受け止めている私の頬を両手で挟むと、キスを止めて再び私の瞳を見つめてきた。
そして、くっと目を細めて苦しげに大きく息を吐き出しながら呟いた。
「……芽依の瞳がハートになる相手は、俺じゃなくて高橋専務だろ」