焦れ恋オフィス
涙をこらえながらも、夏基の側を離れらなくて、抱かれるようになって半年後。
夏基は、もともと、うまくいってなかったらしい彼女と、別れた。
自分への言い訳にしかならないけれど、私が夏基の側で過ごす機会が増えても、夏基からは彼女の気配はあまり感じなかった。
私を初めて抱いたのはこの夏基の部屋。
ちょうど一年ほど前。
当時引っ越したばかりの部屋には、買い替えたばかりのベッドが寝室に置かれていた。
『芽依がこのベッドに入る初めての女』
そう笑って言う夏基の言葉からは、彼女への罪悪感は微塵も感じられなくて私一人がただ戸惑い気味で。
恋人という位置にいる彼女を差し置いて、私がこのベッドで夏基に抱かれていいのだろうかと、所詮は自分を少しは正当化するだけにしかならない苦しみを抱えていた。
彼女の事を気遣うならば、さっさと夏基と別れるべきだとわかっていながらも、それができない自分をごまかすだけのずるさに満ちた苦しみが、さらに自分をみじめにもした。
そして、それからずっと、この部屋で彼女の持ち物を見つける事はほとんどなかった。