焦れ恋オフィス

入社してから、ずっと好きだった夏基の側にいられる幸せを必死で隠して、心全てをさらさないように気をつけて過ごしてきた。

夏基が他の女の人のものだという苦しみを忘れないように。

私が夏基のものではないといつも自覚できるように、私の真意を伝えてはいけないといつも言い聞かせながら側にいた。

それがせめてもの彼女への申し訳ない気持ちを持ち続けるけじめだった。

たとえ自己満足にしかならないけじめだとしても、私の気持ちが夏基の恋人を傷つけている事には違いなくて、それを忘れてはいけないと、いつも心においていた。

会社での私は、どちらかというとしっかりしていて、仕事も余裕でそつなくこな
すイメージをもたれている。

背が高くてかわいげのない雰囲気も手伝って、私が無口なのは人見知りではなくて、単にクールだと誤解もされている。

そんな私だから……夏基との関係に一定の距離を作って、彼女への罪悪感で遠慮がちになっている本当の気持ちを隠すのは、簡単だった。