焦れ恋オフィス
落ち込む夏基には申し訳ないけれど。
どうしても。
私の中には夏基が彼女と別れた事実を嬉しいと思う気持ちが確かにあって。
彼女がいたから、私の立場は
『浮気相手』
だったけれど、これからはちゃんとした彼女になれるんじゃないかと、淡い期待を抱いていた。
彼女に遠慮をして、自分の気持ちをあからさまに見せないようにと心を殺しながら夏基の側に寄り添い抱かれていた悲しい時間を終わらせる事ができるんじゃないかと。
期待せずにはいられなかったけれど、その期待は
『また本命の女を探さないとだめだな』
と呟く夏基の苦しげな言葉で簡単に消えてしまった。
心を貫く刃のようなその言葉は、それまでの曖昧な期待や夏基からの優しい瞳を誤解していた私の心を凍らせるには十分で、これ以上夏基と私が近づく事はないんだろうと思わせる力があった。
けれど、それから半年、相変わらず夏基に気持ちを寄せ続ける私って。
馬鹿なのかな。