焦れ恋オフィス



「何か食いたいの、あるか?」

「……は?」

ぼんやりと意識を飛ばしていたけれど、夏基の言葉にはっと現実が戻ってくる。

夏基が着替えている間、ほんの少し前の過去を思い返していた私の心は切なくて悲しくて苦しくて。

あまり楽しくない思い出に浸るのって、胎教に良くないな。

小さく息を吐いて、気持ちを切り替えて。

「食べたい物か……」

また、少し吐きそうになるけれど食べないわけにはいかないし。

体調の悪さが夏基にばれないように、そっと笑って。

「塩焼きそば」

思わず出たメニュー。

自分でも少し意外だ。

今まであまり食べた事もないのに。

どうして今、そのメニューが浮かんだんだろう。

目の前の夏基も少し驚いている。

「……珍しいな。普段あんまり食べてないだろ?」

「うん。何となく食べたくなっちゃって」

「へぇ」

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