焦れ恋オフィス

夏基の口からこぼれる少し棘と毒のある言葉が、私の気持ちをえぐり、傷つける。

誤解だと、笑って言える時期はとっくに過ぎていると自覚しているせいか、今更どう言ったって、夏基の中の私の位置が変わるとも思えない。

苦しげに表情を作っている夏基に、私はただ曖昧にほほ笑んだ。

「……高橋専務は、芽依の事を大切にしてくれているのか?」

「……そうだね。大切にしてくれてるよ」

「そうか……」

『高橋専務』は、確かに私の事を大切にしてくれている。

その言葉に嘘はない。

いつでも私の状況を気にかけていて、必要以上に心配もしてくれている。

『芽依を、全力で守る』

が口癖の『高橋専務』。

全力で守る対象は私だけではなくて、惚れぬいて自分のものにした妻の真里さんと愛娘の柚季ちゃんもいる。

その二人と私は同列ではないと、ちゃんとわかっている。

それは当たり前の事で、納得できるし。

真里さんも柚季ちゃんも、私は大好きだ。

そんな事、夏基は知らないけれど。

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