焦れ恋オフィス
ぼんやりと、夏基へ思いを馳せながらの私には何もない。
ただの抜け殻に近いかもしれない。
夕暮れのせいか、寂しい気持ちのままリビングのソファに寝ていると、玄関のベルが鳴った。
誰だろう。
ゆっくり起き上がってモニターを見ると、にっこり笑っている二人。
「母さん……。え……央雅もいる」
久しぶりの、予期しなかった訪問者に驚きながら、ドアを開けると
「迎えに来たわよ!」
と明るい声の母さんが部屋に入ってきた。
な……何事……?
私の横を通り抜けてさっさと上がり込む母さんに呆然としていると、溜息をつきながらドアを閉める央雅に気付いた。
「芽依ちゃんごめんな。母さんの暴走、今回も止められなかったよ」
「……もしかして、また『勝手にお祝い』?」
恐る恐る聞くと、私の予想通り
「……今日も冴えてるね。大当たり」
「やっぱり」
苦笑気味の央雅と二人、肩を落とした。
それでも気持ちは少し浮上する。
私を単純に受け入れてくれる弟の央雅と母さん。
一気ににぎやかになった空気を感じて苦笑しながら
これからの事を一人でゆっくり考えるなんて無理だな。
微かに笑った。