月と太陽Ⅱ
第十一夜、エセルひとり
息も絶え絶えにエセルは走り続けた。
「あの人、どうして……」
ふと声を漏らす。
しばらくすると遠くでこちらを手招きしている女性を見ながらエセルは立ち止まった。
ハアハアと息をつく。
肩まである髪で女性であることはわかったが、体は霧でぼやけてよく見えない。
なぜ、二人から離れて彼女を追ったのか、エセルにも分からなかった。
ただ手招きしている女性の所に"行かなればいけない"と本能的に思ったのだ。
そのためにフェリアたちには何も言わず、追いかけることになってしまった。
しかしエセルは気づかなかった。
この異常なまでの濃霧の中で故に八メートルは離れている人間を"見えるはずがない"ことに。