月と太陽Ⅱ
だが、そんな事を考える余裕はなかった。
その女性はエセルが立ち止まっている間にも先へ行く。
エセルはキッと前を見据えるとまた走り出した。
冷たい汗がスーッと額を流れる。
やがてその女性が立ち止まった為追いつく事ができた。
すると女性はこちらに向き直った。
「え……アイラ様?」
エセルが声をもらすとその女性は悲しい瞳で笑い、フッと消えた。
何が何だか分からないエセルはボーっと女性が立っていたところを見つめる。
あれは確かにアイラ様だった…
エセルは一度、何かの本でアイラの十五歳の時の肖像画が見たことがあるのだが、とてもよく似ていた。
少し大人っぽくなってはいたものの確かにアイラの顔だったのだ。