月と太陽Ⅱ



「ハアハア」


呼吸するのもやっとのくらいだ。


エセルはかすむ視界の中、足下に倒れているストックを見た。


漆黒の剣の矛先には赤黒い血がべったりついている。


魔力が弱まったせいかドゥウサックは元のロッドへと姿を変えてしまった。


無我夢中で剣を振り下ろしたエセルの体は限界に達していた。


剣を握った瞬間からの記憶はない。


足下に倒れているストックを見て初めて自分がしたことに気づいたのだから。
< 107 / 172 >

この作品をシェア

pagetop