月と太陽Ⅱ
「名をホルストと言い、その男は君たちの兄だ、と言いました。
そこで初めてお二人はアクレス様の本当の子でない事を知ったのです。サイラ様はショックと同様に、兄がいた事の喜びを感じました。
それからというものの姉のアイラ様の声も聞かず、夜部屋を出て、ホルストの下を訪ねるようになりました。
しかしアイラ様はあいつの目的が王の親権なのでは、と疑いをかけ、奴の行動に目を見張っていました」
イヴの怒りはまだ押さえられないようだ。拳を力強く握りしめている。
それほど主であったアイラが大切だったのだ。
「ある時、サイラ様がホルストが王になるのが正しいはずだと言い出したのです。
アイラ様と私は必死に説得しました。しかしサイラ様は奴を信じ切っており、聞く耳をもたのかったのです……。
そこがあいつの狙いでした」
イヴが吐き捨てるような悔しそうな声で言った。
そして木をドンと叩く。
何も出来なかった自分に悔しいのだ。