月と太陽Ⅱ




ふと後ろからメイドの女性がやってきた。


「ティイラ様。旦那様が読んでおられます。書斎に来てほしいとの事でございます」


「分かったわ」


姉、ティイラはメイドに向き直ると微笑みながら答えた。


そしてサスティンに向かって優しく言う。


「いい?これからは家を出ようなんて考えてはだめよ。少なくともあなたがいなくなったら私は悲しいわ」


一瞬、悲しそうな目をするとティイラは急ぎ足で階段を登っていってしまった。


サスティンは今までにない嬉しさに包まれた。


生まれて初めて自分が必要だと言われた気がしたのだ。


サスティンは階段を登っていく姉を最後まで見届けた。


しかし九歳のサスティンにはそんな姉がどこか悲しそうに見えた。


そうどこか物悲しげに……
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