月と太陽Ⅱ
あまりに唐突すぎて、エセルはその青年の言っていることがよく分からなかった。
何でも城内にいる時に何者かに刺されたのだという。
―――葬儀はすぐに城で行われた。
エセルは両親が入っている棺の前に花束を持ち、立った。
後ろから葬儀に立ち会った人達の声が小さく聞こえる。
「まだ若いのに……残念ねぇ」
「小さなお子さんをおいてだなんて……あの子、まだ六歳なんでしょ?」
「女の子も本当にかわいそうだな」
エセルは周りの言っていることがよく理解できなかった。
「みんな何を言っているの?父さんと母さんはここに寝てるわ。
すぐに目を開けていつものように三人で家に帰るの。だから私は悲しくないし、大丈夫よ」
大きな声で…
父や母にも聞こえるように言った。
葬儀に立ち会った者たちは悲しそうな目でエセルを見ている。
ふいに辺りが暗くなった。
エセルの体が闇に包まれる。
エセルはいつの間にか十六歳の姿になっていた。
エセルは泣き続けた。
声も出さず。
そして、消え入りそうな声で言う。
「もう誰も私の前からいなくならないで。お願いだから―――」
暗闇の中でエセルの声が響いた。