月と太陽Ⅱ
エセルはまた夢の事を考えた。
そう、あの日……私が強く願った日。誰も失わないようにと。
今それを神様が聞いて下さっているのかまだ誰も失っていない。
エセルはその事だけは感謝した。
しかし自分の周りからいなくなった両親を思うと神が憎くて仕方がない。
私がどれだけ苦しんだか。
それを神に教えてやりたかった。
エセルは手を強く握った。
ふいにサスティンがカッと目を見開いて夢から目覚めた。
エセルがサスティンの下に駆け寄る。
「夢だったのか……」
サスティンは小さくつぶやいた。
目を覚ましてからサスティンはあのままずっと夢の中にいたかったと後悔した。
なぜなら夢の中なら姉、ティイラに会えるから。
サスティンが姉を見たのはあれが最後だったのだ。
ティイラは……いなくなってしまった。
それはなぜだか分からないが"あの日"を境にサスティンは変わってしまった。
明るくいたずら好きだったあの性格が無口で皮肉を言うようになっていた。
そして人と接することを怖がってしまったサスティンは自分の殻に閉じこもるようになった。