月と太陽Ⅱ




赤黒い体。


尾は長く、前に垂れ下がっている。


その先から透明な液が少し垂れていた。


小さな黒い瞳はエセルをとらえたがもう満足だというように顔を背け茂みへと走っていった。


カサカサという奇妙な足音が聞こえなくなるまで三人は立ち尽くしていた。


あまりに突然の事だったためにエセルは声も出せず息をのんだ。


しかしサスティンに駆け寄るフェリアやレオルを見て我に返り、自分もサスティンの下へ駆け寄った。


「サスティン!」


フェリアの呼びかけにサスティンはまぶたをピクッと動かした。


まだ生きている事に安心しながらエセルはサスティンがおさえていた首筋を見た。


刺された跡があり、その周りは紫になっていた。


どうやら首を刺されたらしい。


「さそりの毒は体に廻るのは遅いが、下手をすると命に関わることになる。早く村に行って薬で治療をしてもらわないと手遅れになるぞ」
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