月と太陽Ⅱ



そう言うと少し間を空けて言う。


「さそりの毒には強力な邪気があって、それが刺された者の命を奪ってゆく。刺されて助かった者は一人もおらんのじゃ」


誰かがゴクリとつばを飲み込む音がした。


エセルは自分の血の気がサーッとひいていくのが分かった。


この瞬間、サスティンの死が確実に決まったように思えたのだ。


「そんな…」


フェリアは一言、声をもらすとその場に泣き崩れた。


レオルは状況が唐突すぎて、率直に受け取ることができないでいた。


「しかし――」


ノザの言いかけた言葉にフェリアは泣きながらノザを見つめる。


レオルやエセルもすがるような目でノザを見た。


ノザは重々しく言う。


「"治せるかもしれない薬"は知っておる」
< 76 / 172 >

この作品をシェア

pagetop