月と太陽Ⅱ



するとフェリアが一歩前に出て深刻そうな面もちで声をあげる。


「間もなく太陽に全面戦争をしかけます。王は国の使いである私たちが一つ一つの街や村を巡り、兵を動かすための試練を受けているのです」


淡々と説明するフェリアを見て村長ノザは深くうなづいた。


「そうか君たちが……」


意味ありげな言葉をもらすとノザは慌てて付け加える。


「いや、こちらの話だ。そんな理由があったとはな……分かった。明日、試練を受けられるよう準備はしておくわい」


そう言ってノザは笑ってみせた。


そんなノザにすまなそうにレオルが言う。


「色々とありがとうございます」


するとノザは笑いかけながら手をふる。


「いやいや。それよりも君たちに渡さなくてはいけないものがあるのじゃ」


そう言ってノザは奥へと行き、部屋を出た。


それからすぐに戻ってくると手にはビンのような物が握られていた。


「このビンいっぱいに聖水を入れてくるのじゃ。少し多すぎるぐらいじゃがの」


ノザはそういうとエセルにそのビンを渡した。


酒を入れるビンほどの大きさで女神を象った彫刻が掘られている。


しかし意外に軽く、持ち運びによさそうだ。


「迷いの森はこの村から南に道を辿って行けばある。三人とも、幸運を祈っておる」


その言葉に三人は声をそろえて「はい!」と返事をした。
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