月と太陽Ⅱ



そんな中、フェリアがふと口を開いた。


「見渡す限り草原ね。何もないわ」


フェリアに言われて今まで周りの風景を見ていなかった事に気がついた。


それほど考えていたという事だ。


エセルは辺りを見渡した。


確かに草原が広がっている。


東や西の方向に山があるのが見えるがそれ以外は草原だ。


後ろを振り返るとユサはもう見えなくなっていた。


その様子を見てからエセルは前方を指差しながら少し大きな声で言った。


「見て!あれが迷いの森なのよ」


エセルが指差したのは遠くに小さくポツンとある森だった。


森の上空は曇っていて、薄気味悪い。


大空を羽ばたいている鳥でさえも森の近くには近寄らない。


エセルはなぜか悪寒がした。


そしてとてつもない悲しみが襲いかかってきて背筋は凍りついた。


レオルもそれを感じたのか腕をさすっている。


「悲しみのようなものを感じるな。何かを失ったような深い悲しみ……」
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