月と太陽Ⅱ
第九夜、迷いの森
「すごい霧……」
エセルがあまりの濃霧に目をくらませながら呟く。
森は深い霧に包まれていた。
木々はどんよりとした色をしており屋根のように太陽の光を遮っている。
足元がかろうじて見えるだけで三メートル先は早見えない。
これが迷いの森と呼ばれる理由か……
エセルは歩みながら思った。
後ろを振り返ってみたが、もう後ろは見えなくなっていた。
これでは聖水を手に入れられたとしても森から出ることは出来ない。
エセルは森をさ迷い歩く自分を想像して身震いした。
ふと隣を歩いているフェリアをちらっと見たが、不安そうな顔をしている。
後ろを歩くレオルも厳しい顔つきだ。
エセルは辺りを見渡しながらあることに気づき、笑みをほころばせながら二人に提案した。
「ねぇ、私の杖を使って光[ライト]を出せばいいいんじゃない?」
それを聞くとフェリアとレオルは立ち止まり、頷いた。
するとエセルは二人から少し離れて立ち止まると杖を前に突き出し、呪文を唱え始めた。