3つ感情をなくした彼女〜左耳にピアスの穴




波打際ならぬ河打際、月の水面に影を並べて佇む男一人。



「……美雪の親か」



恭介はキャンプに行く直前に佐恵子から聞かされた哀しい過去を思い出して、溜息をついていた。



「なくした感情は簡単には、取り戻せないよな。キャンプに来てもまともに二人きりで話せてないし。ああーどうすっかなぁ」



小石を弾ませ向こう岸に走らせるように投げたあと、寝転がり空を眺める。



適度に涼しい風に揺られ、睡魔が襲ってきて虚ろ眼になっていく恭介に影が忍び寄る。



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