3つ感情をなくした彼女〜左耳にピアスの穴




欲しかった玩具を買ってもらい興奮する子供のように、恭介は美雪が作成した楽譜を読みはじめた。



「すげえ……俺、楽譜読めないから何が書いてあるかさっぱりだけど、でもスゲーよ」



「あなたの余計な一言が人を腹立たせますね」



「俺が君に会いにきたのは、キャンプに誘うためだよ」



人の話を聞かないのも得意。手作り栞を美雪に手渡す。



「栞……キャンプ?誰が」



「メンバーは、俺とミロクと香奈子と妹の結衣と結衣の彼氏くんと……君」



「あたし行きませんよ」



「どして?」



「どうしてって、あたしは」


恭介の歯に衣着せない問い掛けに、美雪はしどろもどろに陥る。珍しい光景だ。


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