3つ感情をなくした彼女〜左耳にピアスの穴




夕食後、広樹は思い詰めた表情で美雪に話し掛ける。


「ご馳走様。あのさ……お姉ちゃんに話しておきたいことがあるんだけど」



「広樹、どうしたの?」



いつになく真剣な表情に美雪は親身になって聞く。



「僕さ、今度の土曜日にキャンプに誘われたんだ」



「……キャンプ?」



キャンプという単語に反応したのか、美雪の脳裏には恭介が浮かんでいた。



「誰から誘われたの、クラスの子?」



「あ、えっと、か、彼女から」



視線を合わせず左頬を掻きながら、照れ臭そうに広樹は彼女が出来たことを話した。



知らなかった、いつの間にかあたしが知らない場所で成長してるんだ。



美雪にとってはたった一人心を許せ、血が繋がってる弟。自分を置いて遠くに行ってしまう寂しさも同時に滲ませていた。



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