この世界が偽りだとしても

†A sweet fragrance†

「それじゃぁ、行ってくる」

カラン、カラン…


景気の良い音がして、少女が店から出て来た。

首にはマフラーを巻き付け、寒くないように厚手のコートを羽織っている。

スカートから覗く脚はブーツの中。スカートに刺繍されている蝶々が可愛らしい。

少女はまだ若い。おそらく16、7だろう。



店の外に出て立ち止まり、予想以上の寒さに驚く。

目の前の通りでは、人が寒さのせいで足早に通り過ぎて行く。

まだ夕方だと言うのに真っ暗だ。

しかし、そんな暗闇を掻き消すかのように、街はキラキラと輝いている。
所々には少し早いが煌びやかに光るクリスマスの装飾が見える。


少女は立ち止まったまま、白い息を吐いては見つめている。

「もう雪が降る季節か…」

少女はうっすらと微笑み、ハニーブラウンの髪を揺らして空を見上げる。

まるで彼女の一言が合図だったかのように、空からは真っ白い雪がはらはらと落ちてきた。


「あら、偶然…。今日は何か良いことがあるのかな?」


彼女は手に舞い降りては溶けていく雪を見つめながら微笑んだ。街の明かりが心地よく辺りを照らしている。

「あっ、買い出しをするんだった」

と、彼女は思い出したように歩き出す。

どこか切なげな微笑みに、俯き加減の人々は気付くはずもなく通り過ぎて行く。
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